2019.06 朝鮮学校の一般授業公開に行ってみた
ちょうど大阪旅行を予定していた日程で、大阪朝鮮第四初級学校が一般授業参観を行うとの情報を目にし、参観させてもらうことにしました。
朝鮮学校の文化祭には何度かお邪魔させてもらったことはありますが、授業参観は今回が初めてです。
鶴橋駅から10分少し歩き、
学校は生野コリアンタウンの中にあります。
午前9時頃はまだ人通りがまばらです。
学校へ到着しました。
受付を済ませ、資料を受け取ります。
校内を巡るようなツアー形式ではなく、今やっている授業を自由に見させてもらうかたちでの見学でした。
こちらの小学校は幼稚園も併設されており、1階が幼稚園、2-3階が小学校となっていました。
幼稚園から小学校にそのまま上がる子がほとんどとのことでした。
当たり前ですが、授業は朝鮮語で行われています。
上の写真は「国語(=朝鮮語)」の授業の様子で、過去形を習っているところでした。
こちらは1年生の子たちの時間割です。
月〜土の1時間目は国語(=朝鮮語)、それとは別に日本語の授業が週4日あります。
各教室の前には教科書の展示もあります。
こちらは国語、初級の「上」と「下」です。
ハングルの書き方、かんたんな単語や日常会話から始まります。
こちらは日本語の教科書です。
写真を撮り忘れてしまったのですが、「大きなかぶ」などの短編が集められており、日本の国語の教科書と似た雰囲気の内容でした。
サッカーの絵を書く子が多いので、サッカーが人気なのかと尋ねると、
小学校では部活動が全員参加必須とのことで、男の子はサッカー部、女の子は舞踊部、
にそれぞれ入部するんだとか。
個人的に興味深いと思ったのは、「社会」の教科書でした。
「社会」授業は3年生から始まるようです。
なぜ、私達は日本で暮らしているのだろうか?というタイトルで始まる章があります。
朝鮮半島の地理です。
祖国紹介のページへ。「私達の朝鮮」
朝鮮学校に於いて「祖国」と呼ばれるのは共和国のため、最初は朝鮮民主主義人民共和国の紹介から始まります。
次に、大韓民国(教科書では南朝鮮と記載されていますが)についての内容です。
そして、祖国統一の未来へ。
真ん中を走る列車は「統一列車」でしょうか。
以前に東京朝鮮中高級学校へお邪魔したとき、ある学生さんがこう言っていたのを思い出しました。
「日本に生まれて、日本語を話して育ったから最初は自分のことを日本人だと思っていた。朝鮮学校に通ううちに、祖国のことを知り、自分が朝鮮人であるということに気付くようになった。」
教科書は日本の歴史のページに続きます。
朝鮮通信使の様子が描かれています。
平安時代のページです。
社会の教科書の前半分が祖国について、後半分が日本についての内容でした。
先生曰く、「昔は日本の歴史について学ぶ内容は皆無だったが、ここ10年くらいで教科書に加えるようになった」とのこと。
「生野区は在日コリアンが多い場所なので、ある意味特殊なのかもしれない。在日であることを隠さない人も多い。
家族や周りもみな朝鮮学校に進学するし、自分自身も朝鮮学校以外に進学するという選択肢はなかった。
最近は、小学校から朝鮮中高へ上がる子は8割くらい、残りの2割は日本の学校へ進学する。」
先生のお気持ちでは本当は全員進学してほしいのかな…少し困った顔でこう仰られました。
「最大の悩みごと…補助金が打ち切られ、財政が困難ということです。寄付や同胞・地域の方々からのご支援でどうにかやっています。本当はお手洗いのメンテナンス等もしてあげたいんですが、なかなか難しいです。」
見学の時間はあっと言う間に過ぎ、講堂へ集められ、学生さんや卒業生の方によるお歌や踊りのご披露がありました。
その後、シンポジウムへと移り、現在置かれている状況や、質疑応答が行われました。
メモ書きをもとに書き起こしますが、間違っている箇所があったらすみません。
自分自身が何者であるのか。
朝鮮学校は民族学校として、アイデンティティの「根っこ」を育てる場所であり、ありのままの自分を愛し、他人にも愛を与えられる人になる、そんな場所であると。
この子達が、この先日本で生きていく中で色んなことがあるかもしれない。
簡単にインターネットで情報に触れられる時代、心無い言葉に傷つくこともあるだろう。
でも、「根っこ」がしっかりと育っていれば、折れてしまうことはない。そう信じている。
朝鮮学校の置かれている状況は、かつてないほどに厳しい。
プール、給食、保健室、耐震検査および建て替え補助、補助金、寄付金控除も無い。
週に1日、オモニ達が奉仕で給食を準備している。
また、クーラーを設置するために、映画「アイたちの学校」のチャリティ上映会を開催した。
日本の学校と比べて生徒数は少ないが、そのぶん縦の繋がりはとても強い。上級生が下の子たちの面倒をよく見てくれる。
最後に、オモニ方が手作りで冷やしうどんを振る舞ってくださいました。
とっても暑い日だったので、あっさりつるつるとしていてありがたく頂きました。
一緒に出していただいたキムチもとても美味しかったです。ごちそうさまでした。
学校を出て、生野コリアンタウンのメイン通りに戻ると、週末のお昼時ということもあり人混みができていました。
東京の新大久保もですが、若い子たちも多いです。
「(コリアンタウンにいる若い子たちは)海の向こうの韓国の文化や芸能人には興味津々なのに、在日コリアンの人々が置かれた状況にはあまり関心がないんだね」
同行者の何気ないつぶやきが、なにか本質を突いているような気がして、不思議に心に残っています。